日本株で来年投資すべきセクターは
日本株で注目度の高い人気500銘柄とJリート14銘柄を、アナリストなどの投資のプロが「買い」「強気」「中立」「弱気」「売り」の5段階で評価したところ、ハイテクセクターが高い評価を得ていました。半導体をはじめとしたハイテクセクターは、来年の日本株の業績をけん引すると予想されています。その理由として、以下の3点を挙げます。
- 来年度の日本株の業績をけん引するのはハイテクセクターと予想されている。
- バリュエーションも過去平均並みであり、特段の割高感は見られない。
- 株価は2022年も23年も出遅れており、伸びしろがあると考えられる。
以下に、それぞれの点について詳しく説明します。
来年度の日本株の業績をけん引するのはハイテクセクターと予想されている
今年の日本株相場をけん引してきたのは自動車セクターでした。昨年の今頃、投資ブログ界隈では、「来年の日本株は自動車セクターに注目!」という記事が目につきました。その理由は、今年度(2023年度)の業績をけん引するのが自動車セクターと予想されていたためでした。
それで、「結果は?」と言いますと、9月下旬は、TOPIX-17業種の中で自動車・輸送機が上昇率トップに立っています。市場全体であるTOPIX(東証株価指数)の上昇率が26%のところ、自動車・輸送機セクターは51%上昇と、約2倍の上昇となりました。
自動車・輸送機セクターは、2022年のパフォーマンスは冴えませんでした。▲13%と下落し、TOPIX-17業種中で電機・精密に次いで2番目に悪いパフォーマンスでした。2022年度の業績も増益でしたが、コロナ禍の影響で部品が足りず、自動車生産が十分に回復しきれない状況を市場は警戒していたようです。それが、生産の本格回復や円安米ドル高の波に乗って株価が一気に見直されたようです。
では、来年のリーダーはどの業種でしょうか?昨年と同じ方法で分析してみました。
今年も9月に今来期の日本株の業績予想が更新されました。野村證券のアナリストによる業績予想を野村證券の業種分類で見たものです。母集団はRussell/Nomura Large Capで、主に時価総額が大きい288社の集計値です。2023年度から2024年度にかけて、経常利益の増益額が大きい順に並べていますが、1位に位置するのが今回注目の電機・精密で、総額で約8.5兆円の経常利益、約1兆円の経常増益額、約13%の経常増益率と、昨年の自動車同様にかなり大きなものになっています。また、2位に位置する化学も、総額で約4.8兆円の経常利益、約0.7兆円の経常増益額、約16%の経常増益率と、こちらも大きな伸びとなっています。
これらの業種の業績をけん引する要因は半導体をはじめとしたハイテクセクターと予想されています。電機・精密では、生成AI(人工知能)向けの半導体需要増加などによる半導体製造装置市場の回復や拡大、車載向け電子部品の回復など、幅広い分野での需要回復を見込んでいます。化学では、半導体市場の回復に伴う電子材料の需要回復などが期待されています。
以上から、電機・精密や化学といったハイテクセクターに注目してみました。
バリュエーションも過去平均並みであり、特段の割高感は見られない
バリュエーションは過去平均並み、株価は2022年も23年も出遅れている
ハイテクセクターのバリュエーションを見ると、過去の平均的な評価水準で取引されており、特段の割高感は見られません。PER(株価収益率、株価÷1株当たり利益)は、2023年9月22日現在で電機・精密が15.6倍、素材・化学が13.7倍です。これらは、2013年1月からの約11年間の平均値である15.5倍と13.8倍とほぼ同じ水準です。
また、株価のパフォーマンスを見ると、ハイテクセクターは2022年も23年もTOPIXを下回っています。2022年は、電機・精密が▲14%、素材・化学が▲7%と、ともにマイナスでした。2023年は、電機・精密が+40%、素材・化学が+43%と、ともにプラスに転じましたが、TOPIXの+26%に比べても大きな差はありません。これは、ハイテクセクターがコロナ禍の影響で需要が減少したり、供給が不安定になったりしたことで、市場の評価が低下したことを反映していると考えられます。
しかし、来年度の業績見通しが良好であることから、株価の伸びしろがあると期待できます。昨年選んだ自動車も、2022年のパフォーマンスが悪い一方で2023年度の業績見通しが良好という組み合わせであり、同じような分析に基づけば、来年の主役は電機・精密と素材・化学などのハイテクセクターになるのではないでしょうか?1年後の検証が楽しみです。
ハイテクセクターで来年注目すべき企業と概要
日本株のハイテクセクターは、半導体や電子部品、電子材料などの分野で世界的に競争力の高い企業が多く存在します。ハイテクセクターは、技術革新や市場動向によって変化が激しい分野ですが、それだけに成長のチャンスも大きいと言えます。今回は、ハイテクセクターで来年注目すべき企業とその概要を5社ご紹介します。
東京エレクトロン(8035)
東京エレクトロンは、半導体製造装置の世界最大手です。半導体製造装置は、半導体の微細化や高性能化に欠かせない機器であり、半導体の需要が高まるにつれて、装置の需要も増加しています。特に、生成AI(人工知能)向けの半導体需要が急増しており、東京エレクトロンの製品はその分野で高いシェアを持っています。東京エレクトロンは、技術力や品質、サービスなどで高い評価を得ており、長期的な成長が期待できます。
キーエンス(6861)
キーエンスは、センサーや計測器、ビジョンシステムなどの工場用自動化機器の世界的なリーディングカンパニーです。キーエンスの製品は、高い性能や使いやすさ、省エネなどの特徴を持ち、多くの産業分野で利用されています。キーエンスは、自社で研究開発から製造、販売までを一貫して行っており、高い収益力や効率性を実現しています。キーエンスは、工場のデジタル化やスマート化に貢献する企業として、今後も需要が拡大すると見込まれます。
日東電工(6988)
日東電工は、電子材料の世界的なメーカーです。電子材料は、半導体や液晶パネル、スマートフォンなどの電子機器に使われる素材であり、電子機器の高性能化や小型化に欠かせません。日東電工は、電子材料の分野で幅広い製品ラインナップを持ち、高い技術力や開発力を誇ります。日東電工は、半導体市場の回復や5G(第5世代移動通信システム)の普及などにより、電子材料の需要が増加すると予想されています。
マクニカ富士エレ(3132)
マクニカ富士エレは、半導体や電子部品の総合商社です。半導体や電子部品は、電子機器の機能や性能を決める重要な要素であり、多種多様な製品が存在します。マクニカ富士エレは、半導体や電子部品の販売だけでなく、技術サポートやソリューション提供などの付加価値サービスを行っており、顧客のニーズに応えています。マクニカ富士エレは、半導体や電子部品の需要が高まるにつれて、収益の拡大が見込まれます。
デンソー(6902)
デンソーは、自動車部品の世界的なメーカーです。自動車部品は、自動車の走行や安全性、快適性などに関わる機器であり、電子化や高機能化が進んでいます。デンソーは、自動車部品の分野で高い技術力や品質、信頼性を持ち、多くの自動車メーカーと取引しています。デンソーは、自動車の電動化や自動運転化などのトレンドに対応する製品やサービスを開発しており、自動車産業の変革に貢献する企業として、今後も成長が期待できます。
以上が、日本株のハイテクセクターで来年注目すべき企業とその概要を5社ご紹介しました。ハイテクセクターは、技術革新や市場動向によって変化が激しい分野ですが、それだけに成長のチャンスも大きいと言えます。ハイテクセクターに投資するには、最新の情報や分析が必要です。